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医学・製薬

健全な脂質代謝維持の鍵はアポリポタンパクC3

「ApoC3は、食物中の脂肪とそのエネルギーへの変換の末梢管理に関連したプロセスの重要な調節因子かもしれません」

リポタンパク質は不溶性の物質、つまりトリグリセリドやコレステロールを血中の水環境で輸送するための独創的な溶体です。リポタンパク質は、疎水性の頭部が脂質の方に向き、親水性の尾部が外側に向いたリン脂質の単層で覆われた脂質からなります。

種類の異なるリポタンパク質は、外側のリン脂質層に付着している個別のタンパク質、つまりアポリポタンパクの違いによって区別されます。新しく合成された脂質やコレステロールを肝臓から他の組織に輸送する超低密度リポタンパク質(VLDL)には、5種類のアポリポタンパク質(apoB100、apoC1、apoC2、apoC3、apoE)があります。中密度リポタンパク質 (IDL) に関連するアポリポタンパク質は2つありますが、低密度リポタンパク質 (LDL) に関連するのは1つだけです。

コレステロールを血中から取り除いて、分解場所の肝臓まで運ぶ高密度リポタンパク質(HDL)は通常apoA1が関係します。HDLは血中から脂質を取り除く働きをするため、一般に高HDL値は心疾患や脳卒中の発現リスクを抑える指標とみなされています。

主に肝臓と腸でつくられるApoC3は、肝臓にトリグリセリドが豊富な粒子が取り込まれるのを阻害すると考えられていますが、これにより、そうした粒子の分解が遅くなります1。ApoC3はトリグリセリドの代謝調節で重要な役割を担っており、その血漿濃度は血漿トリグリセリド濃度に直接相関することが示されています。

血漿中の全apoC3のおよそ半数が最終的にHDLと結合しますが、このことから、HDLの良い作用を減弱させている可能性が示唆されます2。apoC3-HDLは、肝臓の新規生合成を介してのみ生じ、かつ脂質輸送体ABca13の存在が必要ということが最近示されました。

マウスでの研究では、ABca1 と apoC3-HDL が、apoC3誘発性の高トリグリセリド血症の予防で重要な役割を担っていることが示されました3。一方、ApoC3-HDL濃度は病的な肥満患者でも上昇します。HDLのこのような多様性には、血漿トリグリセリドのホメオスタシスの維持が関与していることが分かります。

肝臓でのトリグリセリド溶解速度の調節における apo3-HDLの重要性が、脂肪組織でその機能解明を促しました。近頃、アデノウイルスを感染させてヒトAPOC3を発現したマウスで、HDLでのapoC3発現作用と脂肪組織での代謝活性が調査されました4

マウスのHDLのアポリポタンパク質の組成と、白色と褐色の脂肪組織のミトコンドリアを分析しました。TCI低温冷却プローブを取り付けたブルカーのAvance III HD 700 MHz核磁気共鳴分光計を使って、血清代謝を解析しました。

そのデータからは、apoC3が正にHDLの構造と機能を変えることが示されました。ApoC3-HDLには、含まれるリン脂質と遊離コレステロールが対照のHDLよりも多く、また抗酸化活性が高いことが分かりました。さらに、(白色の方ではなく)選択的に褐色脂肪組織内での代謝活性を増進したことによって、より力を出すアデノシン三リン酸が産生されました4

この最新の研究によって、apoC3はHDLの心臓保護作用を打ち消すのではないか、という懸念が払拭されました。心血管リスクを決めるのは、HDL濃度それ自体ではなく、リポタンパク質の機能であることに光が当たったのです。

ApoC3は、正常な脂質代謝で重要な役割を担っています。特定のタイプの高トリグリセリド血症の生理学的濃度を回復するためにapoC3の発現を抑制することにベネフィットはあるでしょうが、その発現を完全にブロックすれば重篤な弊害がもたらされると考えられます。

参考資料

  • Cappelletti S, et al. Caffeine: Cognitive and Physical Performance Enhancer or Psychoactive Drug? Curr Neuropharmacol. 2015;13(1):71–88.
  • Harman D. Aging: Minimizing free radical damage. Anti-Aging Med. 1999;2:15–36.
  • Sies H. Strategies of antioxidant defense. J. Biochem. 1993;215:213–215.
  • Delincee, H. Improvement of the ESR Detection of Irradiated Food Containing Cellulose Employing a Simple Extraction Method. Radiat. Phys. Chem. 2002;63:455‑8.
  • Kameya H. Evaluation of Hydroxyl Radical and Alkyl-oxy Radical Scavenging Activity of Coffee by ESR Spin Trapping Method. Journal of Food Science and Engineering 2017;7:305‑311.