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環境科学

NMR: 問題解決の一助に

環境科学とNMR

トビイロホオヒゲコウモリ、セイヨウミツバチ、ニチリンヒトデの3つは全く別の種ですが、ある共通の恐るべき境遇にあります。いずれも、まだ毒性が十分に分かっていない感染症によって生息数が減少しているのです。それぞれ白鼻症候群、蜂群崩壊症候群、ヒトデ消耗性疾患という病気が原因で生息数が急減していますが、このアウトブレイクの全容はまだ分かっていません。既知の病原体、環境の悪化、気候変動が合わさって致命的な相乗効果が生じていると考えられます。

気候変動の影響など環境的ストレス要因が増大する21世紀の複雑な問題に科学者が対峙する場合、当然このような相乗効果を理解する必要に迫られます。

NMR – 複雑なシステムを調査する柔軟性の高いツール

環境調査には他にはない難しさがあります。例えば、汚染物質を調査するのに、エアロゾル相から地下水溶質、そこから植物を介した食物連鎖までを追跡するのは途方もなく困難ですが、それを消費する生物に対する影響を判断するのはさらに困難です。その上、明瞭に分離して研究室で再現することができない反応もあり、柔軟性の高い分析ツールが必要となります。

NMR分光計は多様な環境問題の調査に対応可能な装置として使われており、汚染物質の影響とその改善手段の効果の両方を分析するのに有効であることが実証されています。例えば、指標種であるムラサキイガイに関する最近の調査では、石炭火力発電所から放出される2つの汚染物質、水銀と多環芳香族炭水化物(PAH)に曝露させた後の代謝物の変化を見るためにプロトンNMR分光計を使いました。プロトンNMR分光計は、土壌・地下水中のテトラクロロエチレンとトリクロロエチレンの浄化における鉄由来の酸化物の可能性を評価するためにも使われました。

NMR分光計は、様々な相にある有機物の分析にも多く利用されています。いくつか例を挙げます。:

  • 未処理標本を使って海、湖、川の溶解有機物の天然存在比を分析する。これは一般的な分離処理に比べ、環境の真の状態のスナップショットを捉えられます。
  • 13Cで標識した種子を発芽させた後、生育中に幅広い構造と代謝の変化を特定する。
  • 土壌構造と主要な土壌成分間の相互作用を決定する。
  • 土壌全体における汚染物質の結合状態を調査する。
  • 生体(この研究では小型甲殻類の淡水産ヨコエビ)を分析する――本質的に、溶液から固体まで全成分の分子構成を決定します。

NMR – 環境研究への多面的アプローチ

私たちの地球を、そして人類の生存を脅かす問題の全容を本当に理解するには、汚染物質と、様々な環境や相――大気・水・土壌、液相・ゲル相・固相――でそれらの物質が通る過程を研究者が追跡できなければなりません。包括的多相(CMP)NMR分光計の進歩によって、系をこのように全体的に捉えることができるようになり、さらに、有機体の代謝を追跡する機能によって、気候変動などのより微妙なストレス要因についても知見が得られるようになりました。NMRの能力は、in vivoやin situ研究の分野において、環境科学者にとって欠かせないツールとなっています。

EPRによる環境中のフリーラジカルと遷移金属イオンの追跡

電子スピン共鳴(EPR)分光計も環境研究にとって貴重なツールであり、フリーラジカルの追跡に使われているだけでなく、地下水や土壌中の有毒な金属イオンを検出し、植物によるそれらの吸収を追うことができます。EPRを使った金属の毒性についての研究は、地衣類からルピナス土壌中の銅(II)などの遷移金属イオンの可動性と可給性を調べるためにも使われています。