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NMRを利用した医学および医薬品の研究

NMR分光法を利用した疾患の原因解明

アルツハイマー病、自閉症、癌、自己免疫疾患、これらは医学および医薬品研究の最前線にある疾患の例です。これらの疾患に共通する特徴は複雑性です。各疾患には、単一の明確な原因ではなく、環境、遺伝、エピゲノムの相互作用など複数の複雑な要因により生じると考えられる特性があります。これらの相互作用を理解し、ストレスや炎症反応などの大きなメカニズムとどのように関連しているかを理解することは、これらの疾患に対する優れた治療薬を開発するために重要です。

また、感染症は依然として重大な脅威となっており、エボラなどの新しい疾患、HIVなどの既存の疾患、そしてMRSAや結核などの新たな薬剤耐性の発現がその例です。

NMR – バイオアナリシスのための定評あるテクノロジー

これらの疾患を理解するには、複雑なプロセスを解き明かして分子レベルで各寄与因子の役割を明らかにする必要があります。病原体に対して細胞がどのように反応する、またはしないのでしょうか。消化器系がどのように栄養素を吸収するのでしょうか。膵臓が糖にどのように反応するのでしょうか。

ここで核磁気共鳴(NMR)分光法が力を発揮します。NMRは、医学および医薬品の研究における複雑な疾患のプロファイリングおよびマッピングに有用なツールであることが証明されています。たとえば最近、研究者はプロトンNMR分光法を用いてセリアック病の代謝バイオマーカーを発見しました。セリアック病はグルテンの摂取によって誘発される自己免疫疾患です。この研究チームは、セリアック病患者とセリアック病でない人の間で乳酸、バリンおよび脂質の血清中濃度が異なることを明らかにし、診断の向上に役立つとともに治療ターゲットとしての可能性もあると指摘しました。異なる研究グループによる別の研究では、自閉症の小児の代謝産物に注目し、二次元NMR法を用いて詳細な研究およびバリデーションを行うべきターゲット候補をいくつか発見しました。

NMRは分子構造の解明に比類なき能力を発揮するので、医薬品開発のための重要な道筋にもなります。たとえば、研究者は西アフリカのいくつかの国で最近危機的状況を引き起こした、強毒性の出血熱であるエボラの治療法を探索しています。そこで、ウイルスのタンパク質被膜に結合してウイルスを阻害する能力を示した化合物の開発中に、構造レベルでの薬剤-ウイルス相互作用の評価および最も有効な化合物を見出すための類縁体スクリーニングに、NMRが用いられました。

その他の医学および医薬品の研究でのNMR利用例を以下に示します。

また、イタリアの百寿者を対象とした研究で実証されたように、NMR分光法は、体内で悪い働きをするものだけでなく良い働きをするものを見出すためにも役立ちます。研究者がNMRを用いて百寿者の尿および血清を高齢者対照群と比較した結果、100歳以上の群におけるユニークな脂質生合成の変化が明らかになり、41種の脂質の量が高齢被験者と著しく異なっていました。

NMRの強力なバイオアナリシス・ツールボックス

NMR分光法には他の診断法と比較していくつかの利点があります。NMRは非侵襲的で非破壊的です。たとえば、NMRでは外因性のトレーサー分子を使用する必要がなく、検体を他の検査用に保存できます。これは、タンパク質溶液、個々の細胞、摘出した灌流臓器、in vivo組織などの様々な系における多様な生物学的プロセスの解析に用いることができる有効なプローブです。

EPRによるセカンドルック

電子常磁性共鳴(EPR)分光法は、化学反応で生成するラジカルと反応自体の両方を研究するための、高感度で特異的な方法となる第2の関連テクノロジーです。したがって、これは酸化ストレスの影響および抗酸化療法のベネフィットの有無を評価するために優れたツールです。

たとえば、EPRテクノロジーの最近の進歩によって、非活動的な人からウルトラマラソンランナーに至るあらゆる人の活性酸素種の生成速度を追跡するために、現場で使用できるようになりました。