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医学・製薬

GDF15は継続的な栄養ストレスへの応答として産生

「GDF15は、味覚嫌悪反応の媒介物質となり得るストレス誘導性ホルモンです」

GDF15(growth differentiation factor 15, 増殖分化因子15)の発現は統合的ストレス応答によって調節されることが、最近の研究で明らかにされました。GDF15は食生活の急激な変化に反応して産生されるというよりは、例えば長期に渡る高脂肪食やリジンの急激な欠乏などの栄養的ストレスの連続が、その産生の引き金となります。さらに、GDF15を投与したマウスでは条件性の味覚嫌悪が引き起こされます。

GDF15は様々な形のストレスに応答して産生されることが知られています。GDF15はほとんどの種類の細胞に発現する可能性があり、最近ではミトコンドリア病の診断バイオマーカーとして、また心不全や癌の予後マーカーとして臨床現場で使われ始めています。

GDF15またはその受容体(GFRAL)が欠損したマウスでは食事性肥満がみられる一方、GDF15を過剰発現したマウスは体重が激減することから、GDF15はエネルギー収支と栄養制御にも生理学的役割を担っていると考えられます。

血清中のGDF15濃度は年齢、喫煙、激しい運動、癌、その他の各種疾病などにより上昇することがわかっていますが、どのような栄養状態がGDF15産生の引き金となるのかは十分には解明されていません。

最新の研究では、栄養状態の変化がいかにGDF15の発現に影響するかを調べるために、一連の試験がマウスと人について実施されています。カロリー制限食、高脂肪食の短期過剰摂取といった幾通りかの食事メニューのいずれかを摂らせた後に、体重や循環中GDF15濃度への影響が測定されました。マウスでは、GDF15の発現調節に関与する統合的ストレス応答(ISR)の諸要素の検討も行われました。

マウスを対象とした試験では、BrukerのMinispec LFシリーズNMR分光計を用いた時間領域核磁気共鳴法(TD-NMR)による体組成の測定を4週間毎に実施しました。

通常の腸管ホルモンやレプチン満腹感に反応して産生されますが、この場合はそうではなく、カロリーの余剰も欠乏も、比較的短期間であれば循環中のGDF15濃度に有意な影響を及ぼしませんでした。しかし、高脂肪食やアミノ酸不均衡食を長期間与えられたマウスでは、GDF15濃度が上昇しました。

こうした餌では、ある種の組織でISRが活発化し、さらに、GDF15をマウスに急性投与した場合には味覚嫌悪反応が誘発されました。こうしたことから、GDF15は栄養的ストレスを是正するために、ある種の食物に対する嫌悪を引き起こすのではないかと推測できます。

GDF15の産生量は多少のカロリー余剰や欠乏の影響を受けませんが、栄養的ストレスが持続的に加わると、それを矯正する方向へと変化します。GDF15は栄養バランスを回復させるためにストレス応答を誘導し、問題の栄養素を過剰に含む食物を忌避させるのです。

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参考文献

Patel S, et al. GDF15 Provides an Endocrine Signal of Nutritional Stress in Mice and Humans. Cell Metabolism 2019;29(3):707‑718. https://doi.org/10.1016/j.cmet.2018.12.016