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医学・薬学

NMRによりアルファヘリックスがHIVワクチンのターゲットとなることが判明

ある最近の研究では、核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて、HIVワクチン接種によって生じる抗体の標的であることがわかっているペプチドの三次元構造を測定しました。著者は、動的なαヘリックス構造がHIVワクチンの防御効果の基盤と考えられると述べています。

抗レトロウイルス療法の最近の進歩によってHIV患者の余命が劇的に改善しましたが、ウイルスの拡散を防ぐためのワクチン接種は現在でも莫大な可能性を秘めています。これまでに第III相試験で有効性が実証されている唯一のHIVワクチンはRV144であり、異種プライムブースト法によって接種1年後に60%の効果が得られています。

筆頭著者であるニューヨーク大学のMohammed Aiyegbo博士のチームは、2017年1月20日に雑誌PLoS OneでPeptide Targeted by Human Antibodies Associated with HIV Vaccine-Associated Protection Assumes a Dynamic α-Helical Structure(HIVワクチンによる防御に関連するヒト抗体の標的ペプチドは動的なαヘリックス構造をとる)という論文を発表しました。著者は、RV144によるHIVワクチン接種時に生成する抗体の標的ペプチドの構造的特性の解明を試みました。

このペプチドには23個のアミノ酸が含まれており、HIVのMN株の第2可変(V2)ループ内のセグメントと同一の配列です。RV144の第III相試験で、このペプチドに対する抗体価の高さがHIV感染リスクの低下に関連していることが明らかになりました。

RV144の防御効果における役割の理解を深めるために、著者はこのペプチドの三次元構造を測定する目的で、ブルカーAVANCE II分光計を使用してNMRを実施しました。 ab initioタンパク質フォールディングアルゴリズムを用いて、著者はペプチドのエネルギー的に好ましい一連のコンフォメーションを決定しました。

NMRデータに基づいてアルゴリズムにさらに制限を取り入れた後、著者は溶液中でペプチドがねじれて柔軟なαヘリックス構造をとることを明らかにしました。HIV配列の別のセグメントから一連のNMR制限を設けた対照実験ではこのαヘリックスが消失したことから、観察された結果に信頼性があることがわかりました。

さらに1歩前進するために、研究チームは他の循環血中HIV株のV2領域(アミノ酸165~181)に同様の形態が認められるかどうかを検討しました。実際に、評価したすべての株がヘリックス構造をとり、大半が柔軟なαヘリックス構造であることが明らかになりました。著者は、「興味深い点として、HIV感染の前臨床動物モデル試験に多く用いられているSIVmac251株の同等のセグメントはMN株との類似性が高い」と述べています。

これらの結果を確証するために、著者は過去に発表された結晶構造データを用いてV2バリアントのホモロジーモデル5810個を作成し、ほぼすべて(>95%)のバリアントがαヘリックス構造をとりやすいことを明らかにしました。HIV配列のこのセグメント内の保存されたアミノ酸は、観察されたαヘリックスの一側に集中していました。

著者は次のように結論付けています。「この知見は、MNに特異的でRV144ワクチンによって誘発される防御関連の抗体の標的エピトープがすべての循環血中HIV株で保存されているという仮説の構造的根拠を示している」。著者は、αヘリックス構造がRV144接種の防御効果と相関していると考えられ、この情報は有効性の高いHIVワクチンのデザインに有用となる、と考えています。

参考記事:

Aiyegbo, Mohammed S., Evgeny Shmelkov, Lorenzo Dominguez, Michael Goger, Shibani Battacharya, Allan C. Decamp, Peter B. Gilbert, Phillip W. Berman, and Timothy Cardozo. “Peptide Targeted by Human Antibodies Associated with HIV Vaccine-Associated Protection Assumes a Dynamic α-Helical Structure.” Plos One 12.1 (2017)

Rerks-Ngarm S, Pitisuttithum P, Nitayaphan S, Kaewkungwal J, Chiu J, Paris R, et al. Vaccination with ALVAC and AIDSVAX to prevent HIV-1 infection in Thailand. NEngl J Med. 2009; 361(23):2209–20.

Zolla-Pazner S, deCamp AC, Cardozo T, Karasavvas N, Gottardo R, Williams C, et al. Analysis of V2 antibody responses induced in vaccinees in the ALVAC/AIDSVAX HIV-1 vaccine efficacy trial. PLoS One. 2013; 8(1).

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