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メタボロミクスによるギラン・バレー症候群のバイオマーカー同定

「… これは我々の知る限り、GBS患者における一次代謝と脂質の統合されたプロファイルに関する、最初にして最も包括的な研究です」

ギラン・バレー症候群(GBS)は、末梢神経を傷害する自己免疫異常が突然起こる疾患で、手足や腕、脚の痛みと筋力低下を特徴とし、時には麻痺に至ることさえあります。

重症化を防ぐには迅速な治療が必要ですが、GBSの診断にはしばしば困難が伴います。中枢神経系の炎症性脱髄障害(IDD)など、GBSと同様の症状が他の幾つかの疾患にも見られるためです。その上、GBSに特異的な、十分に確立されたバイオマーカーはまだありません。GBSには数種の亜型が存在しますが、患者によっては亜型の見きわめが難しく、最適な治療法を選択しにくいことがあります。

しかし、最近のメタボロミクス研究を通してGBSの最も一般的な3種類の亜型のバイオマーカーが特定されたことにより、より迅速な診断の可能性が開かれました。メタボロミクス分析は細胞内の全ての低分子化合物を測定する技術であり、バイオマーカーの発見に非常に有効なツールです。この技術を用いれば、手順についての予備知識は不要になります。

これまでに、 血漿を対象とした代謝研究の結果に基づき GBSの亜型の指標となりうる数種の化合物が提案されています。最新のメタボロミクス研究では、GBSで損傷を受ける神経と直接接触する脳脊髄液(CSF)でこそ、一層詳細な情報を得られるという仮定のもとに、脳脊髄液が使用されました。

BrukerのAscend III 600分光計とクライオプローブを使用して、GBS患者86例と健常対照群20例の脳脊髄液試料を一次元1H- NOESY(Nuclear Overhauser effect spectroscopy )NMRにより分析し、並行してリピドームプロファイルの検討も行いました。得られた結果を、IDD患者の試料を用いた先の分析結果と比較しました。

IDDSとGBSとで、ある特定の代謝物の濃度が明らかに異なっていました。グルコースおよびケトン体の濃度はGBSで高く、IDDでは特に増加しなかったのに対し、乳酸濃度はIDDで高く、GBSでは低くなっていました。

既知の臨床所見の違いを反映する差が、一般的な3種類のGBSの亜型に対する代謝プロファイルで認められました。GBSの亜型で症状がよく似たAIDP型とAMAN型とは、代謝プロファイルも類似していました。臨床所見が異なるMFS型では、代謝プロファイルもAIDP型、AMAN型とは異なり、クレアチンおよびリジンの枯渇が特徴的に認められたほか、一部の脂質の濃度に他の亜型にはない独自の変動が見られました。

さらに、脳脊髄液中のスフィンゴミエリン濃度と、GBS関連の機能障害(GBS Hughesスコア)の相関が認められました。

GBS患者の試料で観察された一次代謝機能不全や脂質代謝異常という代謝上の特性は、GBSの基礎病理の解明の手がかりになることが期待されます。その成果はやがて、臨床に役立つ固有のバイオマーカーシグネチャーや新たな治療戦略の開発を可能にし、GBSの診断をより早期に正確に行うことで、迅速かつ適切な治療を施し、患者の転帰を改善することにつながるでしょう。

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参考文献

Park SJ, et al. Integrative metabolomics reveals unique metabolic traits in Guillain-Barré Syndrome and its variants. Scientific Reports 2019;9:article number: 1077. https://www.nature.com/articles/s41598-018-37572-w#Sec9