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応用例

種子の発芽過程についてNMRイメージングがこれまで以上の情報を提供

“…このイメージング研究は、菜種の発芽過程における重要事象での空間的様相について、多くの情報を提供する。これは種子の構造がどのように水分摂取パターンを事前に決定しているかを検証する…”

種子の発芽は、穀物が根付くための基本となるステップです。またこれは休眠した種子の成長フェーズへの移行でもあります。発芽は、種子の水分吸収により開始します。水分吸収後には小根が形成され、種子の成長が始まります。

効率のよい発芽は優れた穀物の栽培に必須であるため、農業分野において種子の発芽は最重要事項です。このため、当然ながらバイオテクノロジー分野の多くの科学者が種子の発芽についての研究を行っています。それらの研究の多くは、水分や酸素の有用性(外因性因子)、ホルモン、休眠、遺伝子タイプの影響(内因性因子)といった種の発芽時期や発芽率に影響を与える因子を対象に行われています1

核磁気共鳴(NMR)画像診断は、種子発芽研究において広く利用されているツールです。NMRの技術は、高いエネルギー放射ではなく、核スピンの磁気モーメントに依存しているため、非侵襲性、非損傷性となっています。そのため、NMR画像診断技術は苗木の物理化学的特徴の解読に関する有用な情報を提供しています。

しかしながら、発芽の初期段階である水分の吸収過程についての研究はほとんど行われていないため、発芽期における水分吸収後の事象や、種子発生から胚発生時期に始まる代謝過程を評価するためのさらなる研究が必要とされています。

水分吸収から発芽までの過程について我々の理解をさらに深めることで、穀物の生産性を増加させる新しい科学技術の開発を容易にし、世界中の飢餓を解決できるようになるかもしれません2,3

Munzらによる近年の研究では、500 MHz Bruker AVANCE NMR画像診断プラットフォームを用いて菜種(Brassica napus)の水分吸収と胚組織に至るまでの経路を直接的に追跡し観察しました5。使用するNMRは、種子発芽の促進に必須のシグナルを分析するため、コンピューターによる種子モデリング、蛍光色素による呼吸系のマッピング、フーリエ変換赤外顕微鏡を併用しました。また、NMRのデータは低速度撮影動画の作成に使用しました。

この研究に採用されたホリスティックなin vivo分析では、種子発芽において重要となる過程間の関連性を調査することが可能であり、水分吸収とその配分の性質や、それがその後に発生する化学的・代謝的事象にどのような影響を与えるのか、また構造の変化を調査しました。

研究者らが発見したのは、小根へと水分を誘導する内胚乳における脂質の差であり、組織の再水和が、糖代謝と脂質利用の開始を示すシグナルとして特定されました。発芽種子の空間的分析では、水分が急速に吸収されるもののそれが不均等であることを明らかにしました。

この研究で得られた画像データによって、種子発芽中に発生する空間的そして代謝的な変化に対し、多くの情報が有用となっています。このように知見が深まることが、種子発芽率を最適化し、穀物生産量を最大化するプロセスの改良を目指す研究者への助力となるでしょう。

500 MHz Bruker AVANCE NMRイメージングプラットフォームの詳細についてはこちらまで:Bruker社お問い合わせ窓口

参考資料:

  1. Bassel GW. To Grow or not to Grow? Trends Plant Sci. 2016;21(6):498-505.
  2. Weitbrecht K, Müller K, Leubner-Metzger G. First off the mark: early seed germination. J Exp Bot. 2011;62(10):3289-3309.
  3. Née G, Xiang Y, Soppe WJ. The release of dormancy, a wake-up call for seeds to germinate. Curr Opin Plant Biol. 2017;35:8-14.
  4. Borisjuk L, Rolletschek H, Neuberger T. Surveying the plant’s world by magnetic resonance imaging. Plant J. 2012;70(1):129-146.
  5. Munz E, Rolletschek H, Oeltze-Jafra S, et al. A functional imaging study of germinating oilseed rape seed. New Phytol [published online August 11, 2017]. doi: 10.1111/nph.14736.