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医学・薬学

NMR(核磁気共鳴)は結核とインフルエンザの研究にすばらしい機会をもたらします

膜タンパク質の構造と機能を調べるために固体NMR分光法を使用することで、インフルエンザと結核の治療薬の研究開発に、新しい重要な機会がもたらされます。

NMRの専門家であるティム・クロス博士は、最近のインタビューで、これらの病気の予防における潜在的ターゲットとして膜タンパク質を研究するために、自身の研究チームがどのようにNMRを活用してきたかについて説明しています。クロス博士は、フロリダ州立大学にある米国国立強磁場研究所(National High Magnetic Field Laboratory)で、NMRやMRIのプログラムを率いています。博士の研究チームはここで、結核やインフルエンザの膜タンパク質が疾患過程で果たす役割について、驚くような新発見をしてきました。研究チームはまた、これらのタンパク質を阻害することが、より効果的な医薬品の開発を先導する可能性があることに気づきました。

クロス博士と同僚たちが研究してきたタンパク質の一例が、M2プロトンチャネルです。M2プロトンチャネルは、インフルエンザウイルスの外皮にあり、ウイルス内部にプロトンを流入させます。研究者たちは、このプロトンの流れを妨げることでウイルス感染を予防または停滞させることができることを発見し、研究チームは現在、M2プロトンチャネルを阻害する新たな薬剤を開発中です。豚インフルエンザの流行時、ウイルスに突然変異が生じ、現在使用できる4つの治療法のうち2つが無効になってしまったことを考えれば、この発見は医薬品業界にとって特別に素晴らしい好機であるといえます。したがって、この病気を治療するための新薬の開発が急務となっています。

研究チームが取り組んでいるもう1つのプロジェクトは、結核菌感染における細胞分裂のメカニズムに関するものです。研究チームは、細菌のdivisome(細胞分裂に関わっているタンパク質群)に存在するタンパク質を理解することで、細菌の細胞分裂を防ぐ方法を見いだし、それによって病気の進行を止めたいと考えています。近年、研究チームは鍵となるタンパク質の3次元構造を明らかにしました。このタンパク質はCRGAと呼ばれ、divisomeを構成する他のタンパク質を細胞分裂の場に呼び集める働きをします。研究チームはまた、CRGAに結合する複数のタンパク質の調査を行うとともに、これらのタンパク質が複合体を形成する際の活性を阻害する方法についても研究を始めています。

現在、結核により年間130万人の人々が亡くなっています。薬剤耐性結核の薬は特に毒性が高く、その副作用によって多くの感染者が亡くなっています。したがって、divisomeタンパク質をブロックする分子阻害薬の開発は、結核治療薬の開発において、非常に期待の持てる機会を新たにもたらすものです。

クロス博士は、高品質・最先端の技術がいかに研究チームの成功の中核を担っているかを説明します。高度な計測技術を使用しなければ、試料の電場を検出し、この全く新しい研究分野を切り開くことはできなかったでしょう。クロス博士らは今、より高い磁場でさらに分子量の大きいタンパク質の特性を決定できる技術を用い、研究をさらに前進させたいと考えています。