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タンパク質・核酸

核磁気共鳴(NMR)スペクトル法を用いたリポタンパクプロファイルの定量化

“NMRに特化したSOPの開発は、異なるコホート間の比較を可能にし、バイオマーカーとしての可能性を持つリポタンパク粒子の分布について、新しい知見を創り出す”

心血管疾患(CVD)は、全世界で最も一般的な死亡原因となっています。世界保健機関によると、2015年に発生したCVDに関連する死亡数は1,770万人にものぼり、これは世界中の死亡数の実に31%を占めています。

CVDにつながる重要なリスク因子には、不健康な食事、運動不足があり、これらは血液中の異常な脂質プロファイルにもつながります。

脂質は疎水性であるため、単独では血流に運搬されることはなく、その代わりにタンパク質と結合してリポタンパクと呼ばれる複合体を形成し、脂質を体内の組織へ運搬します。組織内へ運搬された脂質は、そこで貯蔵もしくはエネルギー源として利用されます。

リポタンパクは、その組成や密度に基づき、カイロミクロン(CM)、超低密度リポタンパク(VLDL)、中間比重密度リポタンパク(IDL)、低比重リポタンパク(LDL)、高比重リポタンパク(HDL)という5種類に分類されます。

これらのリポタンパク画分は、心血管系に有害・有益を含む様々な影響を与えます。また、それらの画分はCVDリスクにつながる副画分へとさらに細分化されます。

血液中リポタンパクの分析について、現在行われている一般的な方法には多くの時間と労力が必要です。臨床関係者からは、リポタンパクのスクリーニングを改善し、CVDの予防と診断に有効な効果的分類・定量方法の確立が求められています。

近年発表されたSøren Engelsenらによるレビューでは、現行の方法とNMRスペクトル法が比較されており、将来的にはNMRスペクトル法がリポタンパクの分析において革新的変化をもたらすであろうと考えられています。

現在のリポタンパク分析に用いられている判断基準は、密度勾配超遠心分離(UC)が一般的で、この方法では、明確に画分を分離し、定量することが必要となりますが、NMRスペクトル法であれば、リポタンパクの分離と定量が一度に実施できます。

NMRスペクトル法であれば、リポタンパクの化学的・物理学的特性に対する感受性があるため、リポタンパク画分と副画分の両方が測定できます。また、種々のリポタンパク画分と副画分は、それぞれ化学組成や大きさが異なることから磁気に対する感受性に差があり、LP粒子濃度を直接反映して固有の振幅を持つ独特のNMRシグナルが観測されます。これにより、血中リポタンパクの同定と定量が1回の検査で可能となります。

また、Engelsenらは、この他のNMRスペクトル法の利点をその「非破壊的性質」としており、これは、採取されたサンプルの自然化学平衡が維持されるということを意味しています。さらに、最新の標準操作手順書(SOP)に準じ、血清や血漿サンプルを-80℃で保存した場合、NMRプロファイルの変化無しに9ヵ月間という長期保存が可能となります。

UC法であれば、サンプルは新鮮でなければならないため、サンプル採取から分離までを可能な限り迅速に行わなければなりません。

NMRスペクトル法を用いたリポタンパク分析の唯一の欠点は、NMRスペクトルをUCなどの基準となる一次的方法で多変数回帰法を用いて校正しなければならないことです。

これを実現するためには多大な労力が必要となりますが、Bruker社のAVANCE IVDrでも示される通り、NMRスペクトル法と多変量解析とを組み合わせれば、リポタンパク濃度、特定のリポタンパク画分におけるコレステロールとトリグリセリド含有量の定量を、効率的かつ高精度に実現できます。

Engelsenらは、実臨床におけるNMRを利用したリポタンパク分析についてはまだいくつかの障壁があるものの、現在、NMRによる測定と基準となる方法の標準化に取り組まれていることから、この技術がリポタンパク分析分野において革新的変化をもたらすであろうと述べています。

AVANCE IVDrの詳細についてはこちらまで:Bruker社お問い合わせ窓口

参考資料:

  • Engelson, S.B et al. Quantification of lipoprotein profiles by nuclear magnetic resonance spectroscopy and multivariate data analysis. Trends in Analytical Chemistry 2017;94: 210-219. https://doi.org/10.1016/j.trac.2017.07.009