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イチジクラテックスから同定された子宮頚部癌の新薬候補

「NMR/MSを用いて分析した未処理のイチジクラテックス、イチジクラテックスの上澄液、およびポリマーゴムに含まれる化合物の幾つかを初めて報告します」

子宮頚部癌のほとんどは、その発症にヒトパピローマウイルス(HPV)が関わっています。子宮頚部癌は女性に4番目に多い癌であり、2018年には50万例を超える新規症例が報告されました。

HPVは細胞の増殖分化をコントロールする分子経路を妨害し、制御不能な細胞増殖を引き起こします。HPVのDNAがごくわずかでも存在すると、子宮頚部癌の発症リスクは増大します。全てのHPV感染が子宮頚部癌につながるとは言えませんが、潜在するリスクを解消しようと、HPV感染に対する有効な治療法の研究に大きな関心が集まっています。また、そうした治療法は、癌化した頚部細胞をより安全に除去する手段としても期待されています。

現在、子宮頚部癌の拡大を防ぐ治療としては、外科的切除や化学療法、凍結療法などで異常な細胞を除去する方法が用いられています。このような処置は効果的ですが、組織に重大な損傷を与える危険があります。

未熟なイチジク(Ficus carica)の実から取れるラテックスは、例えばイボのような、HPVが引き起こすヒトの皮膚病変の治療に効果的なことがわかっており、これを利用すれば、HPVに感染した頚部細胞を組織損傷のリスクなしに処置できる可能性があります。Ficus caricaのラテックスが持つ生物活性成分を明らかにし、作用機序を解明すれば、治療薬の開発が促進されると考えられるのです。

その目標に向けて最近、イチジクラテックスの成分分析を通してHPV不活化のメカニズムを探る試みが、研究者によって行われました。一連の分析には、BrukerのAvance III 600 MHz NMR分光計による核磁気共鳴(NMR)法、およびBrukerの飛行時間型MicroTOF Focus分析計による質量分析(MS)法が使用されました。

分析は未処理のイチジクラテックス、イチジクラテックスの上澄液、ポリマーゴムについて実施され、抗HPV活性を有すると思われる化学成分が初めて同定されました。著者らは得られたデータに基づき、活性物質はおそらく親油性であり、クロロゲン酸/フェルラ酸/コーヒー酸のいずれかの植物ステロール誘導体ではないかと推定しています。

さらに、イチジクラテックス抽出物をHPV感染した子宮頚部癌細胞株CaSki、HeLa、および対照としてヒト不死化ケラチン生成細胞(HaCaT)に添加することにより、生物活性を検討しました。

すると、HPV感染細胞における制御不能な細胞増殖や癌化の抑制、アポトーシス誘導、コロニー形成阻害、HPVの腫瘍性タンパク発現量の減少などの、様々な抗癌活性が観察されました。イチジクラテックス抽出物はまた、HPV癌タンパク質やHPV診断マーカータンパク質の脱制御を妨げ、腫瘍抑制タンパク質の再活性化を促すこともわかりました。対照のヒト不死化ケラチン生成細胞(HaCaT)において毒作用は認められませんでした。

これらの最新の知見は、Ficus caricaラテックスをHPV関連子宮頚部癌の治療と予防の新薬候補として進行中の研究が、意義あるものであることを裏付けています。

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参考文献

Ghanbari A, et al. Biological activities of Ficus carica latex for potential therapeutics in Human Papillomavirus (HPV) related cervical cancers. Scientific Reports 2019; 9:Article number 1013. https://www.nature.com/articles/s41598-018-37665-6#Sec2