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材料科学

18.8 T DNPでの四極子核過分極

すべてのNMR活性核のうち、スピンが1/2よりも大きいものは75%以上あります。新しい固体材料、例えばゼオライトや表面触媒、金属有機構造体、電池材料や医薬品1 などの特性評価にとって、このような四極子核を検出することは、構造と機能の関係を把握し、またその特性を説明するために不可欠です。

とはいえ、このような核の分解能は高くありません――NMRスペクトルが広く、日常的に利用しているマジック角回転(MAS)法では完全にはゼロに平均化されない強い四極子相互作用があるためです。ただし残基のブロードニングは外部磁場の強さに反比例するので、非常に高い磁場でスペクトルを記録する手法が高分解能を達成するためのアプローチになります。2

反対に、大きな電子分極を小さな核分極に移動させる動的核分極法(DNP)3–5の場合、そのNMR感度を高めるための主だった手法が強磁場(> 18 T)では通常ほとんど無効なために、四極子核の利用は制限されています。

リバプール大学とCentre de RMN à Très Hauts Champs de Lyon、ならびにスイス連邦工科大学ローザンヌ校からなる、Frédéric Blanc教授をリーダーとする科学者のチームが、先頃、英国王立科学協会雑誌Chemical Communicationsに発表したところによれば、ラジカルを加えた剛性マトリクスを使って、18.8 Tで効率的に電子-核分極移動が可能で、スピン5/2の四極子核17Oを検出することができます。6

英国の工学・物理化学研究評議会(Engineering and Physical Sciences Research Council)が出資したこの研究は、世界に3台あるブルカー社製527 GHz 18.8 T DNP NMR分光計のうちの、リヨンに設置された1台で行われました。本機はNMRのフランス国内のインフラネットワーク(TGIR-RMN)の一環でBlanc氏のグループが利用できるようになったものです。

この研究では、交差作用ならびに核分極移動機構であるオーバーハウゼン3電子の両方を使って17Oの過分極を観測しました。後者は、非常に高い磁場でのDNPの新しい手法になる可能性が認識されています。7,8著者らは、オーバーハウゼン機構による増強は交差作用よりもわずかに大きいに過ぎないものの、層状水酸化物中の17OのNMRスペクトルデータを迅速に取り込める、最も時間効率の高い経路であることを見出しました。

DNPで増強した、非常に高い磁場での固体NMRは、装置の開発と並行して急速に進展しています。材料研究のための四極DNP NMRの用途は、本稿に示した結果に牽引されて拡大していくでしょう。

参考資料

1. MacKenzie, K. J. D. et al. Multinuclear Solid-State NMR of Inorganic Materials; Pergamon Press: Oxford, 2002.
2. Gan, Z. et al. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 5634.
3. Carver, T. R. et al. Phys. Rev. 1956, 102, 975.
4. Hall, D. A. et al. Science 1997, 276, 930.
5. Zhe Ni, Q. et al. Acc. Chem. Res. 2013, 46, 1933.
6. Brownbill, N. J. et al. Chem. Commun. 2017, 53, 2563.
7. Can, T. V et al. J. Chem. Phys. 2014, 141, 64202.
8. Lelli, M. et al. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 14558.

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