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固体分析技術

固体DNP-NMRの基礎

医薬品の探索および開発は、化合物の複雑な構造の理解に基づいて行われます。特定の化合物の構造の知識を得ることは、固体状態の化合物の研究の困難さによって妨げられる場合があります。

固体核磁気共鳴(NMR)イメージングは、固体医薬品に不可欠な評価を可能にし、医薬品開発中とその後の実地診療の場における化学的特性および治療効果の理解に役立ちます。

固体NMRは、薬物間相互作用および製剤化中に生じる変化を解析するために一般的に用いられています。また、NMRによって化合物の有機構造を精査できます。固体NMRは非破壊的なので、同じ試料を繰り返し再評価することができます。

NMRは現在でも固体医薬品の評価のための強力なツールですが、 評価対象の核の小さな磁気モーメントが核リザーバーのわずかな分極を引き起こすため、感度が低いことがよく知られています。また、NMRでは一般に他のイメージング法より多くの試料が必要です。

DNP-NMRとは何か

標準的なNMR分光法で生じる感度の制限を克服するために、動的核偏極(DNP)NMRが多く利用されるようになってきました。DNP-NMRは、電子スピンリザーバーのボルツマン分極の移動によってNMR信号強度を増強するために利用できます。

信号強度の増強に加えて、DNP-NMRはNMR実験中のデータ収集速度も著しく向上させ、それによって固体状態の医薬品の詳細かつ迅速な評価が可能になります。したがって、DNP-NMRは医薬品グレードの試料の構造研究に関して研究の幅を拡大します。

メカニズム:概要

DNPでは電子から核へのスピン分極移動が生じます。しかし、これは固体化合物の放射線損傷による不対電子の生成によって生じる場合もあります。電子スピン分極が平衡状態から逸脱すると、電子-核間の交差緩和によって分極移動が同時に生じる可能性があります。

1つのメカニズムとして熱混合メカニズムがあり、分極移動時に複数の電子スピンが生じます。しかし、固体効果メカニズムでは1個の電子からの磁化移動が生じます。

DNP-NMR分光計:構成

高周波DNP分光計システムの主要部品は以下のとおりです。

  • ジャイロトロン発振器(マイクロ波発生源)
  • NMRプローブ
  • 伝送線(波形導波管)

プローブ

高周波マイクロ波照射を用いたDNP-NMR実験では、試料ローターの機械的回転および電子と核の両方のラーモア周波数でのB1磁場の印加能力が必要です。具体的には、プローブが核スピンを励起させてNMR信号を検出します。NMRプローブは磁場の中心に設置し、その後試料をプローブに挿入して実験を実施します。

EPRプローブは低出力マイクロ波の利用を可能にする大きな品質係数値を示し、ラーモア周波数付近で強力なB1磁場を生成します。試料温度を制御するハードウェアを内蔵していることに加えて、プローブには特定の磁場内の核に特有の周波数で「チューニング」されるラジオ波コイルも装備しています。

ブルカーDNP-NMR分光計はLT MAS Probeおよび1.9 mm DNP MAS Probeを備えており、どちらも電子スピンから核スピンへの適切な分極移動のために低い試料温度に対応しています。

ジャイロトロン発振器

DNP-NMRシステムのジャイロトロン発振器は、高出力マイクロ波を生成します。環状の陰極から電子ビームが送出され、超伝導磁石まで達します。真空管から共鳴キャビティまで移動する間にビームが圧縮されます。共鳴キャビティで横方向の運動エネルギーがマイクロ波に変換されます。

高レベルの出力および高周波数の生成が困難な場合がある低速波発生源と比較して、ジャイロトロンは高磁場DNPにより適した高速波を生成します。

ブルカー製ジャイロトロンは、カスタムデザインのジャイロトロンチューブ、コントロールシステムおよび超伝導磁石を備えています。このシステムは、固体NMR実験における信頼性および安定性に必要な高品質マイクロ波を確実に生成します。

伝送線

伝送線はジャイロトロンをNMRプローブにつなぐ、DNP-NMR分光計システムに不可欠な部品です。通常は環状の波形導波管を使用してTHz出力を試料に送達します。

ブルカー製DNP-NMR分光計

ブルカー製DNP-NMR分光計は、評価対象の化合物にかかわらず、固体NMR実験のために高い感度と短い持続時間の信号を供給します。これらの非常に高度な装置は、電子スピンから核スピンへの分極移動によって医薬品、材料科学および生物学の分野における化合物の観察能力を向上させます。


9.7Tジャイロトロンの写真

分極の移動のために、ブルカーDNP-NMR分光計の高出力ジャイロトロンシステムは263 GHz、395 GHzおよび527 GHzのマイクロ波照射によって信号を20~200倍に増強させます。また、これらのユニークな分光計は長時間の実験に対応しており、時間または安全性の制約なしに固体の詳細な研究を可能にします。

参考資料:

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• Rosay M, Blank M, Engelke F, et al. Instrumentation for solid-state dynamic nuclear polarization with magic angle spinning NMR. J Magn Reson. 2016;264:88-98.

• Akbey Ü, Oschkinat H. Structural biology applications of solid state MAS DNP NMR. J Magn Reson. 2016;269:213-224.0

ブルカーDNP-NMRシステムに関する詳細な情報は、弊社にお問い合わせください。