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食品科学・安全性

NMRを用いた新しい食品保存料の構造解析

「… これらの結果から、L. plantarum EMの抗菌活性は、真菌による食品腐敗や食品媒介性病原菌を防止する有望なバイオプリザバティブ(biopreservative)の開発につながりうることが示唆される」

各種の保存料の添加は、食品製造工程の重要な一部となっています。保存料は食品が輸送や保管の過程で変質する危険性を低減し、病原菌による汚染から消費者を防護します。

そのような抗真菌性/抗菌性の添加剤としては通常、安息香酸ナトリウム、安息香酸、亜硝酸塩、亜硫酸塩、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムなど、様々な化合物が用いられます。

しかしながら毒性への不安が広まる中、消費者は化学保存料を含まない食品を買う傾向が強まっており、また、ある種の腐敗微生物や病原微生物には一般的な化学保存料に対する耐性を獲得したものもあります。

そこで天然の保存料を探そうと、熱心な取り組みが始まっています。ラクトフェリシンやナイシンといった数種の抗菌ペプチドは、酵母や黄色ブドウ球菌、大腸菌を含めた各種病原菌の感染を効果的に抑制する性質を持ち、乳や卵にあるものが同定されています。

最近ではLactobacillus plantarumなどの乳酸菌の抗真菌性、抗菌性も示されており、これまでに抗真菌活性が認められた代謝物には、環状ジペプチド、フェニル乳酸、タンパク様化合物、3ヒドロキシル化脂肪酸などがあります。

バクテリオシン、環状ジペプチド、有機酸、脂肪酸、カルボン酸なども抗菌活性を示します。

韓国の伝統的な発酵野菜製品であるキムチから単離したLactobacillus plantarumの抗菌/抗真菌活性の検討では、殺菌作用はグラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対して有効であり、胃酸や胆汁の存在下でも減衰しないことが示されました。

この研究は更に、もう一つの未知の活性成分の発見につながり、この新たに同定された代謝物の特性解析も行われました。

固相抽出法と高速液体クロマトグラフィーを用いて単離・精製した後、Bruker Avance 500 NMR分光計を使用した 1H および 13C 核磁気共鳴(NMR)法により、未解明の化合物の構造が解析されました。

その分子は生理的pHで安定な3-ヒドロキシ-5-ドデセン酸であることが、この分析により判明しました。抗菌効果は、栄養細胞表面の著しい損傷が引き起こす細胞凝集の結果であり、乳酸や酢酸の存在下で強まることが示されました。

セレウス菌(B. cereus)およびアスペルギルス・フミガーツス(A. fumigatus)に対する殺菌/殺真菌効果があり、一般に使われている化学保存料の安息香酸ナトリウムよりも遥かに低い濃度でこの効果が発揮されました。

乳酸菌は哺乳類には無害であるとみなされ、多くの食材中に自然に存在していることから、食材を細菌や真菌の汚染から守る、化学保存料に代わる天然の保存料として活用できる可能性があります。

最新の研究では、食品業界における細菌/真菌汚染の防止に、Lactobacillus plantarumが有望な候補であることが示唆されています。

NMRによる活性化合物の構造解析を通じて得られる情報は、真菌による食品腐敗や食品媒介性病原菌による汚染を自然な方法で防止する新たな保存料の開発に有用であると考えられます。

参考文献:

Mun SY, et al. Purification and characterization of an antimicrobial compound produced by Lactobacillus plantarum EM showing both antifungal and antibacterial activities. LWT. 2019. DOI: 10.1016/j.lwt.2019.108403.