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化学・石油化学関連

石油業界における課題解決のためのNMR分光法の活用

核磁気共鳴(NMR)分光法は、純粋な分子の構造、動力学、反応状態、および化学的環境に関する詳細な情報を得られる高度な分析ツールです。さらに、複雑な混合物に関する多くの情報も得られます。また、NMR技術は高エネルギー放射線ではなく、核スピンの磁気モーメントに依存するため、高周波を用いて均質性の高い超伝導磁石で測定を行います。

Sonia Cabral de Menezes氏は、ブラジルのリオデジャネイロ連邦大学を卒業した化学エンジニアです。ペトロブラス社の研究開発センターで40年以上勤務しています。同センターは、ブラジル国内で初めて新世代のNMRを導入しました。先日行われたインタビューで、Menezes氏は石油産業におけるNMR分析の重要性について述べています。

ペトロブラス社は、ブラジルの石油・ガス会社です。エネルギー資源の探索から最終製品の開発まで、社内の様々な部門でNMRが重要な役割を担っています。掘削、生産、精製、材料(ゴムや触媒など)、製品の品質およびバイオ燃料といった多様な分野のニーズを満たすために、高分解能の固体、溶液および低磁場の広範なNMR技術を採用しています。Menezes氏は、次のように述べています。「ここは社内で唯一NMR分析を行う試験室なので、例えば生産ラインで、ある材料がうまく機能しないといった課題を解決するために、NMRを必要とするあらゆる社員が訪れます。」

石油産業界では、複雑な油性混合物の評価や、より高品質のディーゼル、ガソリン、ジェット燃料、潤滑剤を製造するための新しいプロセスの開発モニタリングにNMRを広く活用しています。さらに、各種の油性混合物の物理化学的性質を比較し、特定のオイルの粘度、芳香族性、密度などの具体的な特性を定義するのにも使用されています。こうした特性に関する情報を得ることで、そのオイルの最終的な用途や最適な材料を得られる製油所に関する決定を下すことができます。

また、NMRのデータを活用することで、新しい触媒の効果や処理プロトコルなど、パイロットプラントのパフォーマンスを最適化するための製造プロセスの評価も容易になります。例えば、精製の様々な段階で存在する芳香族化合物の濃度や種類の測定にNMRを使用します。

長年に渡り、特に原油のアスファルテンの特性評価にNMRが有用であることが実証されてきました。アスファルテンは、原油に含まれる化合物群で、製造または輸送中に沈殿の問題を引き起こす可能性があります。アスファルテンは、ベンゼンやトルエンといった芳香族には溶解するものの、低分子のパラフィンには溶解しません。高分解能NMRは、沈殿が生じる可能性を予測するのに必要な情報を得るために、アスファルテンの分子レベルでの特性評価に役立てられてきました。また、低分解能NMRは、異なる油井でのアスファルテン含有率の評価に活用できます。原油の平均的な組成に対するアスファルテンの含有率を把握することで、その原油の品質や、製造または輸送中(あるいはその両方)に生じる可能性がある問題について重要な情報を入手できます。

そのため、こうした評価が正確かつ信頼できるものであることが極めて重要です。データの精度が高くなければ、十分な予測が立てられず、生産の無用な中断や利益の損失にもつながりかねません。NMRは、要求される精度を一貫して提供します。

Menezes氏は、次のように述べています。「材料の破損などが原因で石油製造ラインに問題が生じた場合は、その材料を分析し、具体的に問題を特定して、当初の目的のために想定されていた仕様を満たしているかどうかを確認しなくてはなりません。このような場合には、望ましい精度で、問題のあった材料を構成する分子の特性評価を行うことのできるNMRが不可欠です。」

同様に、NMRの信頼性も基本的な重要事項です。特に、NMR装置のベンダーから地理的に離れている南米などの地域では重視すべき点です。南米に拠点がある企業にとっては、信頼性が高く、堅牢でありながら価格も手頃で、さらに国内で技術サポートを受けられる装置を購入することが不可欠です。

石油製品の品質確保、プロセスモニタリング、そして材料や添加剤の特性評価を行う上でNMR分析は常に必要であり、分析が可能な時間も限られています。分析機器が故障すると必要なデータを取得できず、与えられた時間内に操作上の問題を解決できません。これでは製造に深刻な問題が生じ、企業にとって大きな損失となり得ます。

Menezes氏は、将来的にNMRの自動化と遠隔分析を実現する技術の進歩を期待しています。「将来的には、自宅から多様なNMR分析ができればと考えています。スペクトルを扱う上で自動化は極めて重要で、そこから解決策を導き出せます。これは石油業界に限らず、どの業界にとっても重要なことではないでしょうか。」